香港紀(1)成田空港編

今回使用したのは香港エクスプレス。いわゆるLCCというもので、機内食や荷物の預け入れなどの付加サービスを無くせば、格安で航空券を手に入れることが出来る。


技術の進歩や新たなビジネスモデルのおかげで今や誰でも海外旅行のハードルが下がったのは嬉しくもあり、悲しくもある。

 

後方の座席の窓側なので早めに席につき、窓の外に目をやる。

 

作業員や空港の特殊な車両をぼんやりと見ていると、初老の男性が隣に座った。

再び窓の外の方へ目を移すと今度は隣でなにかやりとりがされ、2人の若い女が座ってきた。どうやら先ほどの彼は座る席を間違えていたらしい。

 

乗客の殆どが中国人らしく、周りの人の会話に耳をすませて楽しむことも出来ないまま、暇になってスマートフォンを開く。

SNSにあげられた友人の戯言に目を通し、心の中で軽く悪態をつきながら機内モードにする。

 

アナウンスが始まった。CAの話す英語のリズムやスピードが中国語のようだった。チャングリッシュとでも名付けよう。強気にも感じられる中国語はあまり耳障りの良いものでもないので音楽を聴くことにした。

 

もはや定番とも言える中森明菜の「北ウィング」を流し、およそ5時間半後に降り立つ香港へ思いを馳せ、離陸を待つ。

 

10分ほど経ったであろうか...

滑走路へアプローチした機体がエンジンを轟々と回し始め、ゆっくりと加速して行った。小刻みに揺れながら今日の旅の友は徐々に浮く。そして地面を離れた。

 

離陸時のフワッとした独特の感覚に少し興奮しながら東京の街を見下ろす。日本の友人のことが思い起こされる。さあ、旅の始まりだ。